R)一杯のかけそば

R)一杯のかけそば
それから更に、
数年の歳月が流れた12月31日の夜のことである。
北海 亭には同じ町内の商店会のメンバーで
家族同然のつきあいをしている仲間達
がそれぞれの店じまいを終え集まってきていた。
北海亭で年越しそばを食べ た後、
除夜の鐘の音を聞きながら仲間と
その家族がそろって近くの神社へ初詣に行くのが
5~6年前からの恒例となっていた。
この夜も9時半過ぎに、
魚屋の夫婦が刺身を盛り合わせた大皿を両手に持
って入って来たのが合図だったかのように、
いつもの仲間30人余りが酒や
肴を手に次々と北海亭に集まってきた。
「幸せの2番テーブル」の物語の由来
を知っている仲間達のこと、
互いに口にこそ出さないが、
おそらく今年も空 いたまま新年を迎えるであろう
「大晦日10時過ぎの予約席」
をそっとした まま、
窮屈な小上がりの席を全員が少しずつ身体をずらせ
て遅れてきた仲間 を招き入れていた。
海水浴のエピソード、孫が生まれた話、
大売り出しの話。賑やかさが頂点に達した10時過ぎ、
入口の戸がガラガラガラと開いた。
幾人かの視線が入 口に向けられ、全員が押し黙る。
北海亭の主人と女将以外は誰も会ったこと

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