涙のシャンプ―
私たちの通信簿
この出来事からしばらくして、おばあさんはお客様としてお店に来てくださっ
た。わざわざ手土産までお持ちになって、
町田といいます。先日は、どうもありがとうございました。今日は私をきれ
いにしてくださる?
そういって、少し照れくさそうに笑う町田さんは、先日のおびえた表情とは
対照的に、見ているとこちらまで笑顔にしてくれるような表情だった。
ご来店のきっかけは思わぬことからであったが、今日はインパクトにきれい
になりたくてお越しいただいている。
あの日、笑顔で仕事をしていたから、今日、このお客様がここにいる、そう
思うと、いつも以上に頑張ってきれいにしたい。
スタッフは皆同じ気持ちだったと思う。
お孫さんのことをはじめ、お子さんの話し、昔の町田さんの話、犬が嫌いになっ
てしまった話など、たくさんの会話をたのしんだ。
そして、じつは町田さんの目が不自由だという話も。。。。
あの日目の動きだけが気になっていたのだが、ようやく理解出来た。
仕上げの時に、町田さんはお茶目にいってくれた。
文字を読むのに不都合はあるけどね、これだけ綺麗にしてくれたんだから
鏡に映る今日の自分はちゃんとみえているわよ。都合のいい目なの
ところがお会計の際、困った問題が起きた。
私たちは、その日の私たちの仕事ぶり、お店の雰囲気、技術の満足感、それ
らきちんと把握して、」レベルアップすることを目的に毎日すべてのお客様から
アンケートにお答えいただいている。
この活動を一年近く、毎日一人も欠かさずにアンケートを書いていた
だいていた。なかには、またやるの、とか前髪切ってもらっただけでもや
るんだ、といわれるお客様もいらした。