私の仕事は 幸のおつかい

私の仕事は 幸のおつかい

東京に出て来て、はじめての美容師生活。
夢中で頑張った。営業が終わるとお金がないのでアルバイト。でも頑張った。うまくな
りたかった。指名のお客様も増えた。
ある朝、朝起きて、あわてて靴をはいて出かけようとしたら、靴がはいらない。
いつもは簡単に入るのに、足がはいらない。
仕方ない、もう少し大きめの靴で出かけた。
お店につくと、スタッフみんなからどうしたの?殴られたの?とびっくりした顔で言わ
れた。
鏡を見ると顔が二倍くらい腫れて、ひどい顔。
すぐに病院に行け!
と言われ、病院に向かった。緊急入院するようにいわれた。
無理です。私、お客様のご予約がはいっているので、仕事にいかなきゃ・・・。
死にたいのか!。
すごく怒った先生の声。
肝臓機能低下。このままほっておくと、死ぬとのこと。
その日から、入院生活が始まった。
手術しなければならないはめになった。両親にはいいたくない。むくんだ顔から汗がな
がれる。
ベットの上で今日までの20年間の人生を振り返る。生きるということは、こんなにも
難しいことなのか。死ぬんなら、いつ死んでもいい。静かな世界に行きたい・・・。
などと考えていた。
病室に、いつも私のことをけなす、一番の指名のお客様が来た。
私の体重は1週間で10キロ減っていた。
そのおばさんは私の背中をさすりながら、こんなに痩せて・・・。
と涙をためながら怒った。
退院後、私はそれから半年間、そのおばさんの家にお世話になった。

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