この物語は、今から15年ほど前の12月31日、札幌の街にあるそば屋
「北海亭」での出来事から始まる。
かけそば 7
たくさんの借金が残 ったこと、お母さんが、
朝早くから夜遅くまで働いていること、
ボクが朝刊 夕刊の配達に行っていることなど……
ぜんぶ読みあげたんだ。
そして12月31日の夜、3人で食べた1杯のかけそばが、
とてもおいし かったこと。
……3人でたった1杯しか頼まないのに、
おそば屋のおじさん とおばさんは、
ありがとうございました!
どうかよいお年を!って大きな 声をかけてくれたこと。
その声は……負けるなよ! 頑張れよ!
生きるんだ よ!って言ってるような気がしたって。
それで淳は、大人になったら、お客さんに、
頑張ってね! 幸せにね!って思いを込めて、
ありがとうございま した!
と言える日本一の、おそば屋さんになります。
って大きな声で読み あげたんだよ」
カウンターの中で、
聞き耳を立てていたはずの主人と女将の姿が見えない。
カウンターの奥にしゃがみ込んだ2人は、
1本のタオルの端を互いに引っ 張り合うようにつかんで、
こらえきれず溢れ出る涙を拭っていた。
作文を読み終わったとき、
先生が、
淳くんのお兄さんがお母さんにかわって来てくださってますので、
ここで挨拶をしていただきましょうって……」
「まぁ、それで、お兄ちゃんどうしたの」
「突然言われたので、初めは言葉が出なかったけど……
皆さん、
皆さん、いつも淳と 仲よくしてくれてありがとう。

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