月日の流れ。

かけそば 9
北海亭は商売繁盛のなかで、店内改装をすることになり、
テーブルや椅子 も新しくしたが、
あの2番テーブルだけはそのまま残した。
真新しいテーブルが並ぶなかで、
1脚だけ古いテーブルが中央に置かれて いる。
「どうしてこれがここに」
と不思議がる客に、主人と女将は
『一杯のかけそば』のことを話し、
この テーブルを見ては自分たちの励みにしている、
いつの日か、あの3人のお客 さんが、
来てくださるかも知れない、
その時、このテーブルで迎えたい、と 説明していた。
その話が「幸せのテーブル」として、
客から客へと伝わった。わざわざ遠くから訪ねてきて、
そばを食べていく女学生がいたり、
そのテーブルが、
空 くのを待って注文をする若いカップルがいたりで、
なかなかの人気を呼んで いた。
れから更に、数年の歳月が流れた12月31日の
夜のことである。

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